公開日:2026年10月9日
まず結論
HTHS粘度と動粘度は、異なる条件で測る別の指標です。HTHSは規定の高温・高せん断条件下での粘度を示し、動粘度は別の試験条件下での流動特性を示します。どちらの値も、車両のオイル要求全体に代わるものではありません。調達ではSAE粘度グレード、性能カテゴリー、OEM仕様、現行の試験情報を合わせて確認し、表の最大値だけで選ばないことが重要です。[1][2][3]
宣伝文句より先に、何を測った値か確認する
2種類の5W-30を比較すると、40°C動粘度、100°C動粘度、粘度指数、場合によってはHTHSが並ぶ表を受け取ります。見た目は比較しやすくても、同じ測定を四通りで示したものではありません。調達表ですべてを単に「粘度」とまとめると、判断に必要な条件が抜け落ちます。
ASTM D445は、校正した毛細管を重力で流れる液体の動粘度を測る方法です。TDSには通常、温度とともにmm²/s、別表記ではcStで示されます。ASTM D4683はテーパーベアリングシミュレーターを使用し、150°C、規定の高せん断速度でエンジンオイルの粘度を測定します。単位はmPa·sで、cPと同じです。[2][3]
単位、温度、方法は別々の列に残してください。同じ温度の密度を使ってcStをcPに換算するのは、その条件での動粘度と粘度の換算です。KV100からHTHSを簡単に算出できるという意味ではありません。[2][3]
| 項目 | 一般的な表示 | 確認すること | これだけでは示せないこと |
|---|---|---|---|
| 40°C動粘度 | mm²/sまたはcSt;ASTM D445 | 温度・方法・製品識別 | HTHS性能や低温始動要件 |
| 100°C動粘度 | mm²/sまたはcSt;ASTM D445 | 温度と方法を合わせた比較 | 直接計算したHTHS結果 |
| HTHS粘度 | mPa·sまたはcP;高温高せん断試験方法 | 方法・温度・要求仕様 | カテゴリー全体の適合やOEM承認 |
| 5W-30などのSAEマルチグレード | SAE J300粘度分類 | 完全なグレードと車両要求 | 万能な互換性や総合品質順位 |
同じSAEグレードでも、交換可能とは限らない
SAE J300は粘度に関する特性でエンジンオイルを分類し、あらゆる性能を評価するものではありません。5W-30は候補を絞る条件であり、用途適合をすべて保証する表示ではないのです。エンジンが求める性能規格とメーカー要求も満たす必要があります。[1]
複数の5W-30製品を一つの箱デザインに集約したいケースを考えてみましょう。一方はILSAC要求のガソリンエンジン向け、もう一方はACEA C3用途向けかもしれません。正面の粘度表示は同じでも、必要な製品資料は異なります。版下を承認する前に、統合SKUがどのエンジンと仕様をカバーするのか確認してください。
製品構成を決める際は、確認済みの仕様で需要を分け、その後で容量を検討すると整理しやすくなります。粘度グレードと単価だけの一覧では適合性は見えません。適用情報が不十分なら、技術的な確認が済むまで別製品として管理してください。
HTHSの限度値は性能カテゴリーと合わせて読む
ACEAの2023年軽量車用オイルシーケンスを見ると、条件の違いが分かります。C3のHTHS下限は3.5 mPa·s、C2の下限は2.9 mPa·sです。ただし、この下限だけからC2の上限を推定してはいけません。C5とC6のHTHS範囲は2.6以上、2.9未満です。これらはカテゴリーの要求値であり、KATMOTO製品の実測値ではありません。[4]
この数値は低級から高級への順位ではありません。用途と性能の体系が異なり、HTHS以外の要求もあります。ACEAは、一部カテゴリーが特定のエンジンに適さないことも注意しています。HTHSの大小だけで置き換えず、車両メーカーの指定に従ってください。[4]
一つの試験結果だけでは、ACEA性能全体、OEM正式承認、燃費改善率を証明できません。粘度結果のある報告書が一つの調達疑問を解決しても、仕様資料全体がそろったとは限りません。証拠が何を裏付け、何が未確認かを分けて記録しましょう。
TDS代表値と出荷品の受入限度を分ける
TDSは候補製品の比較に役立ちますが、代表値をそのまま契約上の上限・下限にしてはいけません。公表された代表値と、全ロットで同じ値を保証することは別です。代表値、管理限度、納入ロットで報告可能な項目を確認してください。
試験方法も同様です。「ASTM D4683 / D4741」という欄は、実際に使用した方法を明記した報告書ほど具体的ではありません。僅差の結果を比較したり受入基準を決めたりする場合は、実施方法を確認し、技術的根拠なしに別方法を同等と扱わないでください。
製品名、粘度グレード、資料改訂、試験温度、方法、試料の識別情報を関連付けて管理します。第三者試験を発注条件に含めるなら、採取方法、試験機関の役割、判定手順を出荷前に合意してください。結果の解釈を決めずに測定すると、問題の解決ではなく紛争につながることがあります。
KATMOTOの実例:K8 EURO 5W-30
現行のKATMOTO K8 EURO 5W-30製品ページには、SAE 5W-30とACEA C3の性能表示があり、「Suitable For」と正式承認の違いも説明されています。候補選定の入口として参照したうえで、具体的な用途と仕向け市場に対応する現行技術資料を依頼してください。[5]
本記事では、公表された目標代表HTHS値を各ロットの保証値とは扱いません。また、Suitable For欄のメーカー仕様を独立に確認済みの正式承認とも扱いません。顧客が正式承認を必要とする場合は、該当製品の証拠を求め、承認状況を別途確認します。
例えば「このエンジンとOEM仕様向けの5W-30が必要です。現行TDS、HTHS試験方法、適合表示の位置付けを確認してください」と依頼すると、製品担当者が具体的に調べられます。「一番良い5W-30をください」だけでは選定条件が足りません。
梱包から出荷まで、仕様の識別を保つ
正しい技術選定でも、倉庫での取り違えがあれば意味がなくなります。似た容器の製品は、見積書、注文書、箱ラベル、ピッキング記録で区別できるようにします。商品コードと印刷された仕様表示は、同じ承認済み製品資料に結び付いている必要があります。
実物写真は缶に見える表示の確認に役立ちますが、HTHS性能、ロット適合、正式ライセンスの証拠ではありません。下のK7 PROTECT 10W-30写真はラベル識別の例で、上記のK8 EURO 5W-30とは別製品です。
混載注文を確定する前に、入荷時に容量、商品コード、ロット表示をどう照合するか確認してください。識別が曖昧な箱は、確認が済むまで販売用の保管場所に入れないようにします。これは受入管理の提案であり、現在の在庫や生産能力を示すものではありません。

比較を不確かにする四つの近道
最高のHTHSを万能なアップグレードと考えないこと。低HTHSだけから燃費改善率を推定しないこと。他社のKV40とKV100を比べないこと。そして「合成油」を用途仕様の代わりにしないことです。
HTHSの記載がない場合も慎重に判断します。未記載だから不適合とは限りませんが、評価にHTHS証拠が必要なら資料が不足しています。結果の入手可否、使用方法、性能カテゴリーとの関係を問い合わせてください。
不明点が残るなら候補にとどめ、未確認の用途へ供給しないことが適切です。地域の販売店や整備工場には、裏付けのない広い互換表示より、適用範囲が明確な製品群の方が説明しやすくなります。
HTHSを重視する見積依頼に入れる項目
希望粘度だけでなく、対象車両・エンジン、仕向け市場、具体的なOEM要求を伝えます。必要な性能カテゴリーの表記と、正式ライセンスや承認が購入条件かどうかも明記してください。
現行TDSと各値の意味を依頼し、必要に応じてHTHSの試験方法と温度を確認します。資料言語、容器形式、予定数量も伝えてください。MOQ、供給可否、価格、納期は個別の問い合わせで確認する事項であり、本記事では約束しません。
用途変更や資料改訂を誰が承認できるかも決めます。調達ファイルに残していない技術的同等性の判断を、販売現場の代理店に任せるべきではありません。
| 調達上の疑問 | 供給者への依頼 | 合意する受入条件 |
|---|---|---|
| どの用途をカバーするか | 具体的なエンジン/OEM要求と推奨製品 | 記録に残る用途適合 |
| HTHS値の意味は何か | 値・単位・温度・実施方法・資料改訂 | 合意した技術条件での比較 |
| 代表値か保証値か | 値の位置付けと管理限度の書面 | 代表値を勝手にロット限度へ変更しない |
| 正式承認は必要か | 必要な場合の製品別承認・ライセンス証拠 | Suitable For表示とは別に確認 |
| 納入品をどう識別するか | 商品コード・ラベル・ロット記録・合意資料 | 注文・製品・納入ロットの追跡可能な一致 |
発注前に行う六段階の仕様確認
- 対象エンジンと車両メーカーの用油要求を列挙する。
- SAEグレードと性能仕様全体を合わせて候補を絞る。
- 単位・温度・方法・改訂日を確認してTDSを比較する。
- HTHS資料、適合表示、必要な正式承認の不明点を解消する。
- 試料採取・ロット限度・例外処理を書面で合意する。
- 商品コード・ラベル・調達資料を承認してから発注する。
よくある質問
エンジンオイルのHTHS粘度とは?
規定の高温・高せん断条件下の粘度です。ASTM D4683では150°Cと規定せん断速度を使用し、mPa·sで表します。[3]
100°C動粘度からHTHSを計算できますか?
単純な単位換算ではできません。KV100とHTHSの試験条件は異なるため、対応するHTHS測定情報を求めてください。
HTHSは高いほど良いですか?
いいえ。単一の大小ではなく、エンジンが指定する要求全体に合わせて選びます。
すべての5W-30は同じHTHSですか?
いいえ。同じSAEグレードでもHTHS値、性能カテゴリー、OEM用途適合が同じとは限りません。[1]
HTHS結果でACEA C3適合を証明できますか?
できません。C3には他の要求もあり、一つの粘度結果は性能資料全体の代わりにはなりません。[4]
TDS代表値はCOAの保証限度ですか?
供給者が明確に合意しない限り、そのようには扱えません。代表値、管理限度、納入ロットで入手できる情報を区別します。
供給者がHTHSを公表しない場合は?
試験情報が入手可能か確認します。用途審査に必要なら、十分な根拠がそろうまで判断を保留してください。
注文の前に、仕様資料をそろえる
KATMOTO K8 EURO 5W-30を確認し、対象エンジン、要求仕様、資料チェックリストをKATMOTOへお送りください。販売代理店の問い合わせでは、地域の予定製品構成も記載できます。技術・安全・ロット資料の役割についてはTDS・SDS・COAガイドをご覧ください。
出典・参考資料
- SAE International — J300_202405: Engine Oil Viscosity Classification (2024-05-09), J300_202405: Engine Oil Viscosity Classification
- ASTM International — D445-26: Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids (2026-07-09), D445-26: Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids
- ASTM International — D4683-25: Engine Oil Viscosity at High Shear Rate and 150°C (2025-07-09), D4683-25: Engine Oil Viscosity at High Shear Rate and 150°C
- ACEA — 2023 Oil Sequences for Light-Duty Engines (September 2023), 2023 Oil Sequences for Light-Duty Engines
- KATMOTO — K8 EURO 5W-30 product information (accessed 2026-10-09), K8 EURO 5W-30 product information